音盤随想<インディペンデントの意義>

「Tulpas」はrlwの作品を再構築した5枚組CDである。それらは95〜97年の間に制作された音源が収められた古いアルバムである。rlw自らが運営するレーベル、Selektionがテーマのひとつとしている流通の場における情報の変遷という観点から楽曲を拡…

”Patiruma” 山内桂

タイトル:"Patiruma" アーティスト:山内桂 レーベル/番号:SALMO SAX 2/SFA002 制作情報:CD・2007年・日本例えば海や山などの場所にしばらく滞在するとその場所の残像のようなものが肌に残ったような感覚になることがある。その場所の気温や湿度明るさや…

”hoffinger nonett” Radu Malfatti

タイトル:"hoffinger nonett" アーティスト:Radu Malfatti レーベル/番号:b-boim records/006 制作情報:CDR・2007年・オーストリー私たちは音楽を受容する時感覚に依存し過ぎてきたのかもしれない。ラドゥの最近の一連の作品を聴く時痛いほどそのことを…

”Maison.House II.V” J.L.Guionnet&E.L.Casa

タイトル:"Maison.House II.V" アーティスト:Jean-.Luc.Guionnet&Eric.La.Casa レーベル/番号Vert Pituite LA BELLE/Vp0301 制作情報:CD・2001年・フランスこのCDはジャン・リュック・ギオネとエリック・ラ・カザが南仏地方のドロゴーニュ、アルデシ…

【新譜紹介】”Fields” Jason Kahn

タイトル:Fields アーティスト:Jason Kahn レーベル/番号:cut/cut019 制作情報:CD/スイス/2007年ジェイスン・カーンはドラマー/音楽家であるだけでなくインスタレーションや絵画も手がける。この作品は自身のレーベルCUTから出された2005〜06年間の録…

音盤随想<Sim・ライヴ・日本の音楽シーン>

Simは大島、大谷、植村の3者による斬新なリズム解釈を持ったバンドである。そこに歌手であり女優であり画家でもある佳村の声や歌が絡む。先日渋谷で彼等のライヴがあった。ファンクの匂いがする大島のギター、大谷の電子音、両者が扱うラップトップの音源に…

”Radial” nikos veliotis

タイトル:Radial アーティスト:nikos veliotis レーベル/番号:Confront/confront 13 制作情報:CD/ギリシャ/2003年もしかしたら「楽器」そのものが「楽譜」なのかもしれない。チェロ奏者のニコス・ヴェリオティスのこのアルバムを聴くとそんな想像が頭を…

”Proletarian of Noise” Mattin

タイトル:Proletarian of Noise アーティスト:Mattin レーベル/番号:hibari music/hibari-10 制作情報:CD/2006年/日本マッティンはアナーキストだ。彼の思想がどのように形成されたかは判らないが、バスク生まれであることと関係があるかも知れない。…

音盤随想<時間のフレーム>

手元に2つ、全く関連の無いアルバムがある。両者の音楽の姿を時間と評価という視点から見てみたい。 ■「東シリア教会エジプト・カルデア主教の典礼歌」ネストリウス・カルデア教会司教ベデ(歌、朗読)1977年1月7日現地録音 (世界宗教音楽ライブラリー SevenS…

【新譜紹介】”and so on” Mitsuhiro Yoshimura

タイトル:"and so on" アーティスト:Mitsuhiro Yoshimura レーベル/番号:(h)earings/HR-01 制作情報:CD・2007年・日本吉村はミキサー(あるいはレコーダー)にマイクとモニターヘッドフォンを繋ぎ、そこで起るフィードバックを演奏とする。時に僅かにヘッ…

”battimenti” Pietro Grossi

タイトル:battimenti アーティスト:Pietro Grossi レーベル/番号:ants/AG03 制作情報:CD/イタリア/2003年オシロスコープのプローブをオーディオ・システムのスピーカー端子に繋ぐ。極微弱なランダムな波形が表われる。アンプの電源をオンにするとランダム…

“Hora Harmonica” Albert Mayr

タイトル:Hora Harmonica アーティスト: Albert Mayr レーベル:Ants シリアル:AG02 制作情報:CD/2002年/イタリアAlbert Mayrは西洋和声概念に着目しこの作品を作った。元は83年に作曲されたものだが、音盤として実現されたのはこれが初めてのようであ…

”2006 1” Manfred Werder

タイトル:"2006 1" アーティスト:Manfred Werder レーベル:Skiti シリアル:sk01 制作情報:CD/2006年/日本Manfred Werder (composition) Tetuzi Akiyama(guitar,stones) Mashiko Okura(alto sax) Toshiya Tsunoda(tambura) at Tamagawa-Ryokuchi,Tokto,m…

“ein(e) ausführende(r) seiten 218-226” Manfred Werder

タイトル:"ein(e) ausführende(r) seiten 218-226" アーティスト:Manfred Werder レーベル:Edition Wandelweiser Records シリアル:EWR 0601 制作情報:CD/2006年/ドイツ Realisation:Antoine BeugerManfred Werderは現在、最も先鋭的な作曲家グループ…

”Live in Kansai” Taku Sugimoto

タイトル:Live in Kansai アーティスト:杉本拓 レーベル:slubmusic シリアル:SMCD 11 制作情報:CD/2006年/日本 all music composed by Taku Sugimotoスラブミュージックのオーナーは杉本拓である。2006年はこれを含めRaduの"Tokyo Sextet"と"天狗…

”Tengu et Kitsune” Taku Sugimoto/Taku Unami

タイトル:天狗と狐 guitar duo アーティスト:杉本拓・宇波拓 レーベル:slubmusic シリアル:SMCD 10 制作情報:CD/2006年/日本 recorded at LoopLine,Tokyo May 12,2006これは即興演奏の実況録音である。2人のギタリストの無為な会話のようであり、同時…

Radu Malfatti ”Tokyo Sextet”

タイトル:Tokyo Sextet(2005) アーティスト:Radu Malfatti レーベル:slubmusic シリアル:SMCD 09 制作情報:CD/2006年/日本「ラドゥ・マルファッティが2005年来日した際に用意してきた、エレクトリック・ギター、バス・クラリネット、ヴァイオリン、トロ…

Novaia Liustra & Masahide Tokunaga ”NETORI”

タイトル:"NETORI" アーティスト:Novaia Liustra & Masahide Tokunaga レーベル:Novaia Liustra Edition シリアル:NOV-001 制作情報:CD 2005年 日本Novaia Liustra はMasayuki Yasuhara Yoshihisa Nakanoによるインスタレーションやワークショップ等…

【新譜紹介】 ”composition for harp and sho”

タイトル:"composition for harp and sho"(2006) レーベル:hibari music シリアル:hibari-09 制作情報:CD 2006年 日本player:rhodri davies(harp) ko ishikawa(sho) composer:taku sugimoto masahiko okura antoine beuger toshiya tsunoda4人のコン…

あとがき

ミッシェル・フーコーの著作「言葉と物(渡辺一民・佐々木明訳)」の序文に古代中国の百科辞典に当時の動物の分類が書かれている。これはホルヘ・ボルヘスの著作に書かれていたものだという。「動物は次のごとく分けられる。 a:皇帝に属するもの b:香の匂いを…

James Lee Byars  “Perfect is my death word”

バイヤースは怪しげな芸術家である。黒尽くめの服にシルクハット、覆面までして表れ謎めいた作品やパフォーマンスを作ってきた。その活動暦は長く世界的に有名である。 意味深な言葉と金色と黒を多用した作品はどことなく神秘主義的あるいは錬金術的なイメー…

復刻・越中おわら節名人競演集 富山県民謡おわら保存会

民謡とは一体どういうものだろうか。 どこの国にも民謡と呼ばれるものがあり、どの地域も似た響きがある。この夜を徹して行われる歌と演奏と舞の静かな祭りはそもそも台風の被害を避ける願いを込めて始まったものだったそうだ。胡弓が使われているせいでギリ…

植村昌弘 “続植村計画”

植村は非常にテクニカルなドラムを叩いてきた。彼のタイム感覚と正確でダイナミックななその技に共演者は驚き尊敬する。そのドラミングを録音した波形画像はまるで整形したかのように正確だという。変拍子を得意とし、4つの手足共に全く異なるリズムを同時に…

観世流謡曲百番集⑧「善知鳥」

このカセットは20年以上前に能楽堂などでよく売られていた。 これは一般人が趣味で謡をやるための鑑賞および練習用のものである。能で扱う物語は旅人や僧侶が亡霊と出会いそこでメッセージを受け取りその霊を弔う物が多い。この「善知鳥(うとう)」という能も…

Phill Niblock “The movement of people working”(DVD)

このDVDの映像と音にコンセプチャルな関連を見出すのは難しい。 映像は作者のニブロック自身が70年代に南米やアジア、東欧諸国にて農家や波止場での肉体労働者の作業を延々と撮影したものである。織物、農作業、荷物運搬…どことなくNHK「新日本紀行」を思い…

ЮРИЙ МОРОЗОВ “РЕТРОСКОП” +

これはロシアのソングライター、ユーリ・モロゾフが70年代初頭に自宅でテープ録音したアルバムを収録したCD-Rである。公的に販売されたものではない。 約31分間の"РЕТРОСКОП(Retroscope)"と"ЗЕМЛЯ ШОМОВ(Land of Dwarfs)"の断片である。 この2つのアルバム…

ЮРИЙ МОРОЗОВ “Cherry garden of Jimi Hendrix”

"ВИШНЕВЫЙ САД ДЖИМИХЕНДРИКСА" ユーリ・モロゾフはソ連時代にソングライター兼シンガーとして活動していた。彼はペレストロイカ以降アルバムをリリースしているが、それ以前は様々なバンドに楽曲を提供していた。1980年にリリースされたЯБЛОКО ヤブロコとい…

Franca Sacchi “Essere”

フランカ・サッキは70年代にイタリアで女性の実験音楽作家として活動を始めた。 その後ヨガに出会いインストラクターとしても活動していたようだ。 その70年代はこのLP以外、彼女にはもう一枚のLPとカセットのリリースがあった。 これまで何の情報もなく…

Mondial “Formaţa Mondial”

海外のレコードの愛好者には周知のことだが、外国にはレコードジャケットやレーベル面にサインや書き込みをする者が意外に多い。 これは読書家の蔵書印のようなものかもしれないが、時に個人的な記録が残されたまま中古市場で流通している場合がある。 この…

King Crimson “Larks’Tongues in Aspic”

このレコードはアルゼンチンの70年代プレスである。画像でお分かりのようにジャケット外周はコーティングでありながら茶色く紙焼けしている。音の解像度と音圧は低い。手荒に扱われたようで傷も多い。 しかし少々面白いことにこのレコードのB面途中の「トー…