2005-11-01から1ヶ月間の記事一覧

観世流謡曲百番集⑧「善知鳥」

このカセットは20年以上前に能楽堂などでよく売られていた。 これは一般人が趣味で謡をやるための鑑賞および練習用のものである。能で扱う物語は旅人や僧侶が亡霊と出会いそこでメッセージを受け取りその霊を弔う物が多い。この「善知鳥(うとう)」という能も…

Phill Niblock “The movement of people working”(DVD)

このDVDの映像と音にコンセプチャルな関連を見出すのは難しい。 映像は作者のニブロック自身が70年代に南米やアジア、東欧諸国にて農家や波止場での肉体労働者の作業を延々と撮影したものである。織物、農作業、荷物運搬…どことなくNHK「新日本紀行」を思い…

ЮРИЙ МОРОЗОВ “РЕТРОСКОП” +

これはロシアのソングライター、ユーリ・モロゾフが70年代初頭に自宅でテープ録音したアルバムを収録したCD-Rである。公的に販売されたものではない。 約31分間の"РЕТРОСКОП(Retroscope)"と"ЗЕМЛЯ ШОМОВ(Land of Dwarfs)"の断片である。 この2つのアルバム…

ЮРИЙ МОРОЗОВ “Cherry garden of Jimi Hendrix”

"ВИШНЕВЫЙ САД ДЖИМИХЕНДРИКСА" ユーリ・モロゾフはソ連時代にソングライター兼シンガーとして活動していた。彼はペレストロイカ以降アルバムをリリースしているが、それ以前は様々なバンドに楽曲を提供していた。1980年にリリースされたЯБЛОКО ヤブロコとい…

Franca Sacchi “Essere”

フランカ・サッキは70年代にイタリアで女性の実験音楽作家として活動を始めた。 その後ヨガに出会いインストラクターとしても活動していたようだ。 その70年代はこのLP以外、彼女にはもう一枚のLPとカセットのリリースがあった。 これまで何の情報もなく…

Mondial “Formaţa Mondial”

海外のレコードの愛好者には周知のことだが、外国にはレコードジャケットやレーベル面にサインや書き込みをする者が意外に多い。 これは読書家の蔵書印のようなものかもしれないが、時に個人的な記録が残されたまま中古市場で流通している場合がある。 この…

King Crimson “Larks’Tongues in Aspic”

このレコードはアルゼンチンの70年代プレスである。画像でお分かりのようにジャケット外周はコーティングでありながら茶色く紙焼けしている。音の解像度と音圧は低い。手荒に扱われたようで傷も多い。 しかし少々面白いことにこのレコードのB面途中の「トー…

КРУГОЗОР 7.68

Krugozor magazine 7.1968 issue これはソビエトの音楽と政治の月刊誌である。7インチ盤のサイズで数枚のソノシート付いたものである。スケッチブックのようにページと盤がナイロン・テープでバインディングされている。ソノシートは両面プレスで33回転、号…

S.Y.P.H. “Pst”

ドイツのニューウェイヴ・バンドのデビューアルバムである。CANのホルガー・チューカイがプロデュースと演奏で参加しているせいか、CANとTalking Headsを混ぜ合わせたようなサウンドである。 驚くべきはこのレコード・ジャケットである。 現代ドイツのコンセ…

Atsuhiro Ito “Acousmatic”

伊東篤宏は蛍光灯を使用した楽器「オプトロン」の奏者である。 非楽器の物体が楽器にされたものはエスニック・パーカッションに多く見られる。 例えばメキシコ産のヴィブラスラップは死んだ馬の顎の骨を平手打ちして緩んだ歯が揺れる音を出す楽器である。南…

Dertiende Mixer door:Toshiya Tsunoda & Justin Bennett

これは両者ともフィールドレコーディングを用いたサウンド・ワークによるスプリットLPである。Justin Bennettはオランダ在住のフィールド録音アーティストである。 ”Cacerolada” recorded in Barcelona in March 2003,during the protests against the war i…

The conet project

Recordings of shortwave number stations 乱数放送をご存知だろうか。短波の周波数帯で無意味なシグナルの後、淡々と数列を読む声が放送されるものである。短波ラジオで初めてそれを聞いたとき戸惑ったが、アマチュア無線に精通している者によれば、この放…

Armenie Chants Liturgiques du Moyen-Age

キリスト教では三位一体という言葉を聞く。キリストと創造主と聖霊が神の本質であるという意味である。想像されるようにこの概念は様々に解釈されていった。キリストという実在の人物から神性を強めるべきか弱めるべきか、解釈によって教義は大きく変わり各…

ΜΕΓΑΛΗ ΕΒΔΟΜΑΣ Ecclesiastical Byzantines Hymms

ΜΕΓΑΛΗ ΕΒΔΟΜΑΣ Ecclesiastical Byzantines Hymms このカセット・テープは奇岩の上に立つ修道院で有名なメテオラの麓の町、カランバカで出版されたギリシャ正教の典礼合唱のローカルプレスである。 古代の河川下流の堆積の侵食作用でできた奇岩の上に、幾つ…

Chant Grégorian Abbaye du Thoronet

欧州の教会音楽、特に10世紀前後のそれを聴くと建築との関係を意識せずにはいられない。 グレゴリオ聖歌がどのように発展して行ったかは諸説紛々入り乱れ簡単な結論は出せないが、現在CD等で聴くことができる現地録音の教会音楽はその場所にほぼ定着したもの…

m/s “perturbation field and the equilibrium”

これはコンセプチャルなマルチプルCDである。いや、コンセプチャルというより理論的な作品と捉えた方が正しいかもしれない。十字型をした塩化ビニールのような特殊紙のパッケージ。その中にはOHPシートに印刷された解説が2枚入っている。そこには作品に関連…

Ashley’s

これはLPと画集がセットになった作品である。(画像は画集の図版) ドイツのロックバンドWorkshopのボーカリスト であり画家であるKai Althoffが自ら制作したカラーマーカーによる12枚のカラフルなイラストが載っている。デビッド・ホックニ−やエゴン・シーレ…

Christian Wolff "Stones"

クリスチャン・ヴォルフの石を奏でる作品「Stones」はウィーンのEdition Wandelweiser Recordsからリリースされた。 まさにこのレーベルに相応しい作品である。 その大いに注目されるべきでレーベル、Edition WandelweiserはTimescraper Music Publishingの…

Henning Christiansen "Abschiedssymphonie"

これはフルクサスの演奏家、パフォーマーのヘニング・クリスチャンセンとナム・ジュン・パイク、ヨーゼフ・ボイスが共演した演奏が収められたLPである。演奏の基本はクリスチャンセンとパイクによるものである。2人はピアノとエレクトロニクスを使用。パイク…

Jeff Fuccillo "Disturbed Strings"

ジェフは日本に長く滞在しているギタリストで、現在称されるところのフリーフォーク系の演奏家である。 これは彼が敬愛するJohn Fafeyのスタジオで録音されたものだが、ジョンの悪戯なのか録音中にモニターから音楽の断片が挿入されている。変調された爆音の…

Veljo Tormis "Ellerhein"

Veljo Tormisはエストニアの合唱を使った作曲家として知られている。彼の作品は近年ECMからリリースされており世界的な注目を集めている。 このLPはソビエト時代の作品で国営レーベルのメロディヤからリリースされた合唱作品である。 エストニアに古くから伝…

Filament “Filament BOX”

フィラメントはSachikoMと大友良英の2人のユニットである。 ここには2000年11月から2004年1月の間ブリュッセル、バルセロナ、ヘルシンキ、京都でのライヴと東京での録音が収められている。 サイン波、とくに高周波のそれとグリッジを多用したこの音楽は、演…

Ron Geesin “Right through”

■ロン・ギーシンのこのアルバムは正しく音のシュールレアリズムである。A面冒頭の「Door-o-plane gets its blades」のコラージュが凄い。不気味なドローンが鳴り響く中、小人の合唱のようなものが近づいてくる。突然ドアが開き、あたかもその小人たちが室内…

Alvin Lucier “Still and Moving Lines of Silence...”

"Still and Moving Lines of Silence in Families of Hyperbolas,Part 2" ■アルヴィン・ルシエの作曲活動は音響学的な側面を強調している。この作品は楽音とサイン波を併置することで起こる変化を用いた楽曲である。「Crossing」という楽曲では管楽器等の持…

Sean Meehan ”Sectors(for Constant)”

Solo for cymbals with snare drum ■特殊パッケージのCDは数に無く存在するが、このショーン・ミーハンの2CDアルバムは究極のひとつであろう。紙漉き職人でもあるこのパーカッショニストは2枚のCDを紙に漉き込んでしまった。ちょうどファブリアーノの…

Jliat “Stilllife#5”

■このCDは強烈である。再生ボタンを押した瞬間ブチッと音がしたあと一向に音がしない。ジリアットはこのスティルライフのシリーズでデータCDを出していたこともある。そこでパソコンに入れてみる。再生ソフトの波形図は静止して何の振幅も無い直線を描い…

m/s + toshiya tsunoda “ful”

■このCDの録音状況は以下の通りである。ある密閉性の高い室内の窓の上部に通気用の小窓が付いている。小窓のガラスは時折パタリと音をたてる。これは恐らく室内外の気圧変化によるものらしい。窓ガラスにコンタクトマイクを設置し、これをアンプで増幅しス…

杉本拓 “Principia Sugimatica”

■このCDは杉本拓にとって新境地であろう。この作品での音と余白の関係は明解である。例えば1分間を3つに割ったポイント、20秒おきにギターの短い単音が入る。続いて1分間を4つに割ったポイントにギターの短い単音…という風にある秩序に従って時間を区切り音…

Melchior “Uppysingar”

■このMelchiorというバンドは版画家ディーター・ロスがほとんど勢いで立ち上げたかのようなレーベル、Dieter Roth Verlagから『Balapopp』というLPとこの7インチ・シングルをリリースした。彼等はアイスランド出身の知的で少々屈折した感性が発揮されたト…

And ”The sparkling white wine...”

"The sparkling white wine sailor cat AND cormorant friend Louise" ■これはフィル・エドワーズの「ヴィジュアル作家によるリハーサルなしの即興演奏」プロジェクトAndのCD-Rである。Phil EdwardsのキーボードとPeter Ellisのテレキャスター、Louise Weav…