2005-09-01から1ヶ月間の記事一覧

Roberto Donnini “Tunedless 2”

■メジャー、マイナーを含めてイタリアには多様な実験音楽シーンがある。未来派の時代からルイジ・ノーノまで、もしかしたら前衛=共産主義という図式があったのかもしれない。現在イタリア歌謡界の重鎮のフランコ・バッティアートも70年代にBLABLAなるレーベ…

Peider A. Defilla ”test-signale”

■このミュンヘンの画廊で制作されたレコードは謎につつまれている。どのような経緯で何を意図して作られたかわからないが、興味深い内容である。ジャケットはシルクスクリーンによる印刷である。その内側には24ページにわたるブックレットが付いている。A面…

wrk V229

■このWrKの共同作品は、マイクロフォンからアンプを通してスピーカーで再生する過程、 すなわち音声信号を別の空間に搬送する伝達経路とは如何なるものか、ということをテーマに作られた作品である。 toshiya tsunodaは伝達のための情報の変形を扱っている。…

Hanne Darboven “Vier jahreszeiten- Opus 7”

■ハンネ・ダーボーヴェンは時間の描写という作業を続けている。例えば歴史的な資料書籍のページごとに、便箋のような紙に筆記体や斜線のドローイング、日時の数字を用いた単純な計算などを付加する。これは過去の出来事にまつわる時間の集積を自らの手で血肉…

Leif Elggren ”Cu”

■リーフ・エルグレンの活動は理解しがたい特殊な一面がある。秘密結社の儀式めいたオブセッショナルな行動が多々見受けられる。察するにこれは北欧の歴史、政治、文化に関連しているのだろうか、私たちには理解が及ばない。 このカートン・ボックス入りのシ…

Colette Roper ”Piano Pieces”

■このコレット・ロパーというイギリスの女性音楽家に関しては全く情報がない。リリース元はドイツの画家ディーター・ロスのDiter Roth's Verlag。300枚限定で世に出たものである。反復を多用したつたないタッチの、恐らく自作自演によるピアノは、叙情的なミ…

John Hudak ”Tall Grasses”

■90年代初頭のjohn Hudakの音楽は所謂インダストリアルな響きのものも比較的多く、多くはカセット・テープで地下レーベルから簡素なコピー仕様でリリースされていた。彼の小さな音の出来事に向ける視点は独特である。「ケトル」という作品では、やかんのホイ…

Llorenc Barber “Concierto para Campanarios y...”

“Concierto para Campanarios y Espadanas de la Ciudad de Granada” ■スペインの作曲家/演奏家のLlorenc Barberは、鐘にこだわった音楽を作っている。ヨーロッパに行けばどの街に行っても教会の鐘の音を耳にする。そこにはコミュニティがあり歴史が息づいて…

Hamish Fulton “Wild Life” with an Aeolus CD

■ハミッシュ・フルトンは歩く芸術家である。彼はひとりで自然の中を何日も歩くこと自体を作品行為と捉え、出会った光景をカメラに収め、テキストを付加してプリントにした作品や展示会場の壁面に大きなレタリングで簡潔な文言を書く作品で知られている。例え…

肋骨盤

■数年前に衛星チャンネルで坂田明がロシアにソ連時代にレントゲン写真に溝を切った闇レコードを探索に行った番組が放映されたらしい。番組ではそれを「肋骨盤」と呼んでいた。レントゲンの骨写真が音溝の支持体になっているからである。社会主義国には検閲制…

Vladimir Tarasov “ATTO Ⅶ ‘Water music’”

■ウラジミール・タラソフはソ連時代から長いキャリアを持つドラマーである。様々なアンサンブルに参加しているのでご存知の方も多いと思われる。このCDは現代美術家イリヤ・カバコフとの共作インスタレーション作品「Incident in the Mueum」の記録である。…

Haco “Stereo Bugscope 00”

■ハコは80年代から実験的な音楽を構築してきた。昨日復刻されたアフターディナーのCDは未だに新鮮な発見に富む音楽だ。彼女は常に果敢で詩的な挑戦を続けている。このCDは電磁ピックアップを使用しパソコンなどのデジタル機器から発する電磁波を演奏したもの…

Gianfranco Pernaiachi ”Ora”

■イタリアのANTSというレーベルは、ケージが音楽の世界にも持ち込んだ「Silence」という概念(または様式)を踏み込んで継承したイタリアの作曲家の作品を主にリリースしている。この2枚組みCDは記念すべき第一弾である。詩人であり作曲家であるGianfranc…

Rolf Langebartels ”Skulpturen Fallen”

■この作品は音響彫刻のCD-Rによる記録である。5つの大きさの異なる金属板の上に、モーター仕掛けの糸に吊るされた白い球がある。時間が経つと落下し金属板を打つ。そしてしばらくすると目の高さまで戻る。これがあるサイクルを持って繰り返される。作者の解…

Alvin Lucier “Silver street car for the orchestra”

■アルヴィン・ルシエのこの3inchCDは、トライアングルを握った指の位置を徐々に変えながら倍音の変化によって構成される曲である。一定のリズムで連打されるトライアングルには、奏者の手から熱が伝わりピッチも極僅かながら変化する。それ以外一切の編集加…

Michael Graeves ”Simple Method”

■マイケル・グリーヴスはメルボルン在住の画家であり音響作家である。ずっと絵画の実践を行ってきたが、数年前メルボルンの美術大学でPhilip Samartzisに師事している。この自主制作されたCDEPのジャケットで見られるように、ミニマルでカラフルな油絵を描い…

Taku Sugimoto Yasuo Totsuka & Mattin ”Training thoughts”

■CDジャケットの裏には「これは高円寺駅を通る電車の音を記録したフィールドレコーディング作品だろうか。答えは否である。演奏家が音を染みこませることで、地理的な環境を音楽の中心へと移行させた即興演奏の記録である。」と記されている。つまりここに記…

Mattin 宇波拓 「死霊のコンピューター」

■2人の演奏家がラップトップを使用している。しかしこの作品は、昨今のデジタル音響加工とは明らかに異なる意図で作られている。両氏の演奏を聞かれたことがある方なら想像できると思うが、このCDは音数が少ない。音の聞こえない箇所は「静寂」や「沈黙」と…

Robert Barry ”Otherwise”

■ロバート・バリーの展示は90年代初頭で閉館した京橋の画廊「かんらん舎」でしか日本で催されなかったが、意識の流れを言葉によって探る美しい作品を作る作家である。通常の彼の作品は、スライド・プロジェクタで簡単な英単語をインターバルを置いて壁に投影…

Michael Snow ”Musics for piano,whistling,microphone and ...

"Musics for piano,whistling,microphone and tape recorder" ■マイケル・スノウはもともとPOPアートの動向から絵画や映像を制作してきた作家である。10年以上前に原美術館で展覧会が催されたことがある。このLPの1枚目はピアノの短いフレーズが速度変えて順…

Lawrence Weiner ”Having Been Done At/Having Been Done To”

■ローレンス・ワイナーは言葉を使ったコンセプチャル・アートの代表的な作家のひとりである。通常は短いテキストを壁面ドローイングする作品を制作してるが、彼の作品には言語の置換=翻訳という方法がある。それほど多くは無いが音声と言語を扱った録音物が…

GX.Jupitter-Larsen ”a basic introduction to the ’t.n.u.’”

■純粋なニヒリズムを追求しているGX.ジュピター・ラーセン。 ノイズ・ミュージックの愛好家には The Haters名義の作品で知られているはずだ。「超越膨張数列の基本序説」と題されたこのシングル盤は数ページの解説が付いている。 ●「I」(発音は<アー>) は…

Opalka ”1965-∞”

■コンセプチャル・アートの巨匠Roman Opalka。この人は1965年から延々とただ数字を描く作品を制作している。等身大くらいのキャンバスに、最初は真っ黒な下地に隙間無く小さい白い字で数字を順番に左端から横一列にびっしり描く。キャンバスの下地の色は1枚…

Jliat ”Still Life 1”

■Jliatはイギリスのドローン音楽家である。フリッパートロニクスのようなループ方式で音を重ねて熟成した豊穣なドローンを作る作家だ。しかしこの50枚限定プレスのLPはいつもと様子が違う。配送用の厚手封筒にPCプリントのラベルが貼られた装丁。ペット材の…

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■『“村八分”のカント(渡辺作郎)と、とーちゃん( 三浦孝司)を中心に、当時、“3/3”のメンバーで'78年に“フリクション”を結成したレックとチコヒゲ、渡辺悦子、アンダー・グラウンド版ミュージカル「ヘアー」の主役を務めたジュノ、比田義敬といった人たち…

Katharina Fritsch ”Krankenwagen”

■カタリーナ・フリッチェは世界的に有名なコンセプチャル・アーティストであるが、数枚のレコードをマルチプル作品として発表している。彼女は、自分の人生の中で出会った忘れがたい記憶の対象となっている物や出来事の記憶を呼び起こす「指標」あるいは「サ…

Blind c/w Fragment

■これはUKのTouch傘下のAsh Internationalが、4枚目にリリースしたアナログLPである。内容は飛行機の無線の録音である。短波ラジオに混入するような、電話の盗聴のような音である。速度を読み上げる無表情なパイロットの声が無音の間に散在する。ジャケット…