Ivan Alexeyev,Khomus

omay_yad2005-10-02

旧ソ連ロディア社のこのLPはヤクート族の口琴独奏が収録されている。口琴(ジューズハープ)は、竹などの樹木や金属板に切込みを入れて作った弁を弾き、口腔の体積で倍音を調整して演奏する楽器で世界中に分布している。これは歴史の古いもので、北極圏からモンゴル〜東南アジアに大きな源泉があるようだ。日本ではアイヌムックリが有名だが、この楽器は恐らくシャーマニズムアニミズムに関係するものだろう。この楽器でヤクート、アイヌエスキモーの人たちは動物や鳥の声を、バリ島では蛙の声を真似る。素朴に考えて何者かによって声が変調されたような印象を与えるから、私たちがヴォーダーを通して言葉を聞き取るのと似ているのかもしれない。痺れるような弾く音の背景で聞こえる口腔の倍音のコンビネーションには、私たちの慣れ親しんだことのない「和音」が聞き取れる。対位法ではないが、この両者の周波数の比例関係を聴くのも面白い。またいくつか聞こえる倍音の主従関係を聞いていくのもスリリングな体験だ。民族ごとに固有の文化がある。ヤクートの人々-その多くは現在サハ共和国に住む-が聞き取る内容は私たちにはわからないだろう。血(あるいは地)の中に流れる旋律があることを忘れるべきではないだろう。すべてが翻訳できるわけではない。彼らはこの音を言葉に変える「鍵」を持っている。
Melodiya 33 C 30-08081-82(a) 1978■