Kyuss “…And The Circus Leaves Town”

omay_yad2005-10-07

■カイアスのサウンドは、ストーナー系と呼ばれる、アメリカのサイケデリックなハードロックである。ブラック・サバスを継承した重く引きずるようなリフを多用した70年代サウンドに現代的なドライな重量感がある。彼らは解散してQueens of the Stone Ageというバンドに発展し活動を続けている。このCDのラストに収められた「Spaceship Landing」という35分以上ある曲にはほとんど音が入っていない。最初の5分くらいは通常の彼らのバンド・サウンドだが、フェードアウトして数分間無音となる。突如練習かデモ録音のようなラフな演奏の断片が1分ぐらい入る。そこからまた17分くらい完全な無音が続く。最後に重いギターによる短い歌が入ってこの曲は終わる。ロック・ミュージックとしては長大なこの無音は一体何だろうか。バンドの音からは静寂というよりは圧迫感のある重い沈黙のような印象を受ける。挿入されたラフな演奏の断片がCDに表れることのない外部だとしたら、音楽の裏側で演奏がゆっくりと回転し最後の2分で表に戻ったのだろうか。あるいはタイトル通り宇宙船が離陸した後の沈黙であろうか。ストーナー系やデス・メタルなどでCDのラストの曲が終わった後に数分間無音を挿入し、リスナーが忘れた頃に突然大きな音で再開してびっくりさせる、という常套手段があるが、この曲は全くそう聞こえない。CDの全体の半分近くを沈黙にすることで逆説的にヘヴィネスを醸し出しているのだろうか。あるいは周到にアルバム全体を見つめてコンポジションとしたのではないか。推測の域を出ないが…。いずれにしろこの「沈黙」は単なるインパクトには終わらず、アルバム全体を通して抜けるような青空のような、何か圧倒的な空虚さを表現することに成功している。
(p) (c) Electra 1995 7559-61811-2■