Itineraire

omay_yad2005-10-23

"Transforming an object.Tranceforming a piece of sound"
■「遍歴録」とでも訳すのだろうか、これはドイツのインディペンデント・レーベル、ゼレクチオーンからリリースされた共同制作CDである。プロジェクトに関する情報は一切載っていないが察するに、オブジェと音を送った相手が手を加え次の作家に回していくプロジェクトである。
オブジェの変形はAsmus Tietchens、 Achim Wollscheid、 Giancarlo Toniutti、 Jorg Koperの4人が行っている。5枚のカードにはそれぞれ変形された画像が収められている。オブジェのモチーフは搬送の際に使用する発泡スチロールである。素材:発砲スチロールの断片→細分化:細かく砕かれ紙箱に納まる→液体化:溶剤で溶かされ金属缶に入る→固形化:ビニールのようなものに包まれ固められた小さな断片となり金属片と共にひもに通される→編纂:断片がひもで一本の木の枝に束ねられる。音の変形は5人の作家が行っている。
Frans de Waard→Asmus Tietchens→Achim Wollscheid→Giancarlo Toniutti→Bernahard Gunterの順で変形されていく。CDにはこの逆の順番でトラックが並んでいる。Frans de Waardが録音した何か木材工場で誰かが作業しているような物音のフィールド録音がモチーフである。この音を各自が各自の判断で変形している。Asmus Tietchensはいつものリングモジュレータのような音、Achim Wollscheidは、その昔のS.B.O.T.H.I.での方法論同様、テープ断片のループによる変形。Giancarlo Toniuttiは極端なフェイザーに通したような音響、Bernahard Günterはグリッジと低周波のうねり…各自らしい音響加工が順々に施される。このプロジェクトは所謂リミックスではない。タイトル通りアーティスト間にオブジェと音が通り抜けた結果である。遍歴の途中、作品はその都度姿を変形させ異なる文脈が与えられる。遍歴というシステムではすべての作品が暫定的なものでしかない。つまりここでは作品と作家の通常の主従関係が逆転し、各作家が作品の文脈(コンテクスト)となる。
SCD 016 (c)1995 Selektion ■