ФИРЮЗА Firyuza

omay_yad2005-10-22

■フィリューザはトルクメニスタンジャズロック・バンドである。近年CD化された旧ソ連時代の同自治区出身にグネシュというバンドがあるが、彼等がZaoに中央アジア民謡を混ぜたようなテクニカルでアグレッシヴなもの だとすると、フィリューザはソフト・マシーンに叙情的なメロディーを加えたプログレッシヴな感性のサウンドである。一切のインフォメーションがないので編成人数は分からないがバイオリン、サックス、ギター、ベース、ドラム、キーボードのメンバーは確実にいる。その他パーカッションの専属がいるかもしれない。どこまで欧米のジャズロックを聴いていたのだろうか、馴染みのない地域ゆえに疑問が生じる。トルクメニスタンは名前の通りトルコ系の住民が多く住むイスラム圏である。そのサウンドは比較的洗練されているところと少々起伏に乏しいところが共存した微妙な味わいがある。LPは片面2曲ずつの構成で、冒頭やラストに川の音や虫の声などの効果音が挿入される。リリカルで哀調のあるバイオリンにマイナー調のアルト・サックスが絡みリードを取る場面が多い。楽曲にはそれぞれテーマが設けられているがそれらはあまり強く意識に上らない。A面の2曲目ではギターが中央アジアリュート、タールの奏法を模して奏でられ、そこに口琴が絡むあたりはエキゾチックだがあくまでも私たちが知るところの所謂ジャズロックである。中央アジアにはテクニカルな演奏を得意とするジャズロック・バンドが意外に多い。このフィリューザはウズベキスタンのサドやアノール、サマルカンドカザフスタンのブーメランやメデオのようなエスニック・フュージョン志向ではない。このLPに収録された各々の曲はアップテンポになるところもあるが全体に激しさは無く淡々としている。まるで中央アジアの曖昧な国境線のようである。
国営メロディア社のプレス工場はモスクワ、レニングラード(現サンクト・ペテルブルグ)、リトアニアの首都リガとウズベキスタンの首都タシケントの4箇所あった。タシケントでプレスされたこのレコードは、通常グルジア中央アジア周辺でしか流通しなかったようだ。写真のジャケットはメロディアのカンパニー・スリーヴであるが、このバンドのロゴが入ったオリジナル・ジャケットがあることは確認されている。70年代のソビエトでは有名なバンドやグループでない限り、イニシャル・プレスにジャケットをつけることは少ない。まず最初にこのような汎用ジャケットで出され、人気が出て再プレスされる時に初めて固有のジャケットが付けられたそうである。それも何種類も違うタイプがあることが多い。ペレストロイカ以降、経済活性化と外貨獲得のためにレコード製作に多少とも力が入った時期があり、その時の新譜リリースのためにかつてのレコード盤を中古市場からメロディアが大量に買い取ってリサイクルしたそうである。そして録音に使用されたマスターテープで有名なもの以外は保存もされず、上から録音して使い回していたそうである。ポピュラー音楽には非常に過酷な待遇である。
Melodiya C60-13215-16 1973-1979? (ГОСТ5289-73)■