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omay_yad2005-09-06

■『“村八分”のカント(渡辺作郎)と、とーちゃん( 三浦孝司)を中心に、当時、“3/3”のメンバーで'78年に“フリクション”を結成したレックとチコヒゲ、渡辺悦子、アンダー・グラウンド版ミュージカル「ヘアー」の主役を務めたジュノ、比田義敬といった人たちが参加したマルチ・アート集団。即興演奏中心の摩訶不思議な音楽。3枚組のオリジナル・アルバム』CD解説より。キャプテン・トリップから3枚組みCDでリリースされている。さらに切り抜き引き換え券と指定金額を御社に送ればCD「4」と「5」が届き5枚でコンプリートする。(画像は「5」CD盤面)
このCDは、村八分フリクションのファンにとっては期待しているものと大きなギャップがあるだろう。何の変哲も無い空き地に小石が転がってるような、集団での落書きのような風情。サイケや70年代ロックが持つ特有の温度感や上昇感は徹底して放棄されている。これがLPで3枚組みだった。このCDは盤起こしで、プチプチいう傷とサーフェイス・ノイズが盛大に聞こえる。察するにカッティング・レベルは低そうだ。しかし、この無為な音、もしかしたらヒバリ・ミュージックの宇波拓や杉本拓あたりが現在実践しているものに近いものがあるような気がする。盤の傷音も無為さを強調している。当時の様子はここにある結果の音だけで、その外部は失われていて想像するしかない。僅かにCDのジャケに垣間見れるのみの封印された世界。物言わぬ時空間がパッケージされているようで美しさを感じてしまう。
「5」はミニCDである。内容は何も録音されていない一本の無音のエンドレス・ループ溝レコードの盤起こしである。作者であるカント氏(村八分の3代目ドラマー)曰く、『これは、溝が1本だけ彫ってあり、音が録音されていない‘エンドレスで盤が回るというレコード’(あらゆる行為の意味をむき出しにさせる為の鏡の様な装置を想定)というものであった』 内容はその原盤を片面10分づつ録音したもので、ご想像通りループ溝のサーフェイス・ノイズと傷音しか入っていない。CDで再生する無音とレコードのそれとは違う。今回はどのように聞こえるのだろうか。盤起こしなので「過去」が意識される。 しかしその「過去」は延々と「現在」を繰り返している。この音によって、出会った事のない「過去」とよく知っている「現在」が同時に「むき出しに」なっている。体験はなくとも作られたものにはその過去が宿っていると考えてみたい。
Captain Trip Records CTCD 362-366■