Opalka ”1965-∞”

omay_yad2005-09-08

■コンセプチャル・アートの巨匠Roman Opalka。この人は1965年から延々とただ数字を描く作品を制作している。等身大くらいのキャンバスに、最初は真っ黒な下地に隙間無く小さい白い字で数字を順番に左端から横一列にびっしり描く。キャンバスの下地の色は1枚ずつ完成するたびに少しずつ白が混ぜられていく。恐らく死を迎える時には白の上に白で数字がびっしりと描かれるのだろう。 彼は同時にその数字の朗読を録音し、数字画が完成すると、それを背景に自身のポートレイトを撮影する。年老いて髪の毛はだんだんと白に近づいていく…。このマルチプル作品集は、B4をひと回り大きくしたカートン・ボックスに絵やポートレイトの写真集と一緒にドイツ語のカウンティングが収録された70分強のCDが付いている。まさに仙人のようなこの作業は、「アート」という狭い枠は通り越し、存在の意義のようなものにまで問題は及んでいく。数字は桁が増えるほど1ユニットに消費される空間と時間は長くなる。巨匠の体力と反比例していく…。1993年の時点で4795472まで描かれている。
数字は便宜的に決定された私たちの文化的なツールだが、目的の無い数列は意味をなさない。また、世界には数字に翻訳されない事象もあるのは周知の事実だ。そしてタイトルにある無限を実現することはできない…。そのような「限界」を見据えて尚、彼は無限に近づこうとする。まるで人類の活動すべてを背負い込んでいるかのようだ。気のせいか暗く低く響くその声には懺悔の響きが感じられる。
Neues Museum Weserburg Bremen■