Lawrence Weiner ”Having Been Done At/Having Been Done To”

omay_yad2005-09-10

■ローレンス・ワイナーは言葉を使ったコンセプチャル・アートの代表的な作家のひとりである。通常は短いテキストを壁面ドローイングする作品を制作してるが、彼の作品には言語の置換=翻訳という方法がある。それほど多くは無いが音声と言語を扱った録音物がリリースされている。このLPレコードは、用意された12のテキストを順番に読むワイナー自身の声(英語)とイタリア女性(Marina Girotto)の声が併置される。それに加え、その女性の弾くピアノの簡単な音階が収録されている。それらの音程を表現するアルファベット表記とドレミの表記も一緒に読み上げられる。単純にこのLPを聞くと、まるで語学の練習テープのようだ。言葉そのものをモチーフとしているので、そのまま文章通りの意味が理解できてしまうことが、かえって作品をわかりにくいものにしてしまう。しかし、そこには言葉の表記法と発音、その言語を構成した文化の差異が明快に示されている。普段私たちは、言語を思考と直結するものと理解しているが、具体物をその色彩と形態に分けて分類するように、言語と音声とその意味する内容を切り離して考えることも可能である。そこで浮かび上がってくるものは、その言葉の持つ文化の脈絡である。当然そこには言葉の変遷の歴史が絡んでくる。抽象的なテキストだけでなく、ピアノの音を収録したのは、言語の持つ音声の差異へ関心を寄せたものだろう。
Produced by Sperone Gian Enzo&Fischer Konrad At/RCA Studios Roma May 1973 2G3KY19342■