Michael Snow ”Musics for piano,whistling,microphone and ...

omay_yad2005-09-11

"Musics for piano,whistling,microphone and tape recorder"
■マイケル・スノウはもともとPOPアートの動向から絵画や映像を制作してきた作家である。10年以上前に原美術館で展覧会が催されたことがある。このLPの1枚目はピアノの短いフレーズが速度変えて順番に提示される作品が収められている。一番最初はコンマ数秒で終わるが、B面のラストになると数分掛かりほとんど音程を感じなくなるくらいに引き伸ばされる。録音はカセットテープのような状態でハイファイではない。もう1枚のLPは口笛のフレーズが同様に速度を変えていく。単純な方法で作られているが、これを通して聞いていくと、単なる実験には収まらない問題が盤面に表れる。速度の変化はフレーズの印象を著しく変えていく。私たちはピアノや口笛がだいたいどのくらいの音程のものか知っている。そのため、近時の速度の場合は速度の変化に敏感になるが、判断できないくらいに引き伸ばされると、焦点が合わなくなっていくため、違ったものを聞くような印象になる。特にB面の後半になると、ゆらゆらと低音が揺れているだけになり、レコードの回転そのものに意識が注がれるようになる。レコード・プレイヤーの33回転は一定だが、針が進むに連れ、音溝の円周によってできる円の面積は徐々に小さくなり、反面、溝の幅は同心円方向に増えていく。盤面を裏返せば、また元通りの円周になって進んでいく。一定の長さのものを収めるためには両面に振り分けなければならい。レコードというフォーマット、回転する溝による記録媒体が、短いフレーズによって逆説的に浮き上がるように仕組まれている。 POPアートとミニマル・アート特徴的なの技法の「反復」と「複製(レコード、マルチプル出版)」が再生するたびに体感できる。 尚、ジャケットの裏表にびっしりと書かれたこの作品に対する作家自身のコメントの文字も印刷面に応じて徐々に小さくなっていく徹底振りである。
Chatham Square Stereo LP 1009/10 1975■