Robert Barry ”Otherwise”

omay_yad2005-09-12

■ロバート・バリーの展示は90年代初頭で閉館した京橋の画廊「かんらん舎」でしか日本で催されなかったが、意識の流れを言葉によって探る美しい作品を作る作家である。通常の彼の作品は、スライド・プロジェクタで簡単な英単語をインターバルを置いて壁に投影するものや、大きく空白を取った紙面の隅に小さい文字を配列する作品が知られているが、音声による作品も残している。このLPは赤いジャケットに葉の無い樹木のシルエットが描かれた美しいものである。スライド作品と同用に、抑揚の無い男性の声が、長い空白の間に、ぽつりぽつりと単語を読み上げていく。
 Use to be  Wonder  Sometime  At last  Understood Hoping for
これらの言葉によって連想を行う意識に変化が起こる。ぼんやりした意識の流れには明確な言語は伴ってはいない。そこに具体的な事象を連想させない何気ない言葉が挿入されると、ちょうど水面に置かれた笹の葉の舟が風を受けて流れるように意識が紡ぎ出されたり、遮断されたりする。これに身を任せることは瞑想とは異なる刺激が得られ、ちょうど思考回路のメンテナンスをされるような心地良さがある。この他フランスの美術機関Villa ArsonからCDも発表している。この作品と同様ながら、自然環境音が導し、新たな展開を秘めたものとなっている。
Produced by the Van Abbemuseum Eindoven The Netherlands 1981■