Rolf Langebartels ”Skulpturen Fallen”

omay_yad2005-09-17

■この作品は音響彫刻のCD-Rによる記録である。5つの大きさの異なる金属板の上に、モーター仕掛けの糸に吊るされた白い球がある。時間が経つと落下し金属板を打つ。そしてしばらくすると目の高さまで戻る。これがあるサイクルを持って繰り返される。作者の解説によるとピッチの異なる5つの音の関係に興味を持っていることがわかるが、目の高さのボールが突然落下するところに興味惹かれるものがある。まず目の高さのボールに観者は意識が向かう。それが突然落下に気づいた瞬間に音を聞くのだろう。空間がその瞬間揺らぐような感覚になるのではないだろうか。私たちの聴覚による認知能力は、視覚によるそれと比べて低い。まず目の前の空中に浮いた球は、たとえ糸が見えたとしても唐突な空間体験だ。ある程度の重量があるだろうから、空間で5つの球が静止して見えるだろう。球に留まった意識が球と同時に落下し、空間に大きく共振する音が不意打ちのように自分の回りに広がる。素人判断だが、視覚と聴覚がほぼ同時に刺激され、その瞬間、脳の神経系から運動を起こす機能へスタンバイの指令が行くのか、複数の神経系路の処理の時間差によるのか、それらが空間が揺らぐ感覚を惹き起こすのかもしれない。体験してみたい作品だ。このCD-Rは非常に音がクリアーである。録音機材の品質にもよるだろうが、CD-Rという自家製メディアには通常のプレスCDのような複雑な製造工程が省かれているからでろう。イージーなコピー・メディアと思われがちだが、評価すべき点があることを追記しておきたい。
IRRAH Verlag 1998■