Gianfranco Pernaiachi ”Ora”

omay_yad2005-09-18

■イタリアのANTSというレーベルは、ケージが音楽の世界にも持ち込んだ「Silence」という概念(または様式)を踏み込んで継承したイタリアの作曲家の作品を主にリリースしている。この2枚組みCDは記念すべき第一弾である。詩人であり作曲家であるGianfranco Pernaiachiは、瞑想的な静寂体験をリスナーに提供する。スリップ・ケースに収められたこのCDには図形譜とブックレットが付いている。その冒頭にはこうある。
 Open the book, slowly turn the pages,sailing in the echo of words. Deep breathing.....
十数ページにわたり、片方のページに薄いグレーで書かれた文章の断片がレイアウトされている。小さい音で聞くように指示されたCDには微かな、うなるような低音、焚き火がはぜる音、電子的な鐘の音、鳥が飛び立つ音などが広大な無音の宇宙に散在する。音の質感は強いて言うと電子音楽風で、音響の仕組みや作曲のコンセプトより静寂から感じられる体験を重視しているようである。2時間じっくり体験すると、彼が提供する静寂の濃密さに圧倒される。ここでの無音は空白(blank)ではなく深い奥行きを持った空間である。どことなく宗教的な印象を与えるのは、イタリア固有の文化によるのかもしれない。いにしえの静寂主義のような印象を受けた。
ants AG01 (p) 2002■