Llorenc Barber “Concierto para Campanarios y...”

omay_yad2005-09-23

“Concierto para Campanarios y Espadanas de la Ciudad de Granada”
■スペインの作曲家/演奏家のLlorenc Barberは、鐘にこだわった音楽を作っている。ヨーロッパに行けばどの街に行っても教会の鐘の音を耳にする。そこにはコミュニティがあり歴史が息づいている。そこに住む者の生活に深く関わった音だ。これに着目するのは、決して不自然なことではないだろう。楽器というより音具と称される鐘にこだわる音楽家を、人々は特殊なものと見做してしまうのか、彼を高く評価する者がいるものの、残念ながら入手しにくい。一般に音楽において楽器は手段あるいは方法であって、その楽曲の核を成すものではないと考えらている。しかしその手段と核が渾然一体となったところで聞こえてくる響きが存在することを見逃すべきではない。特定の楽器や手法にこだわるには充分な内容がそこにあるからであり、単純に「○○の音楽家」と認識してしまうのは浅はかなことだろう。音楽に一歩踏み込んで得られるものは無い。特に彼の音楽は他の楽器に置き換えることは不可能だ。風雨に晒された鐘は置かれた場所の風土や歴史を吸収している。このCDに収められた演奏は、グラナダの郊外の鐘楼で200個の鐘を延々と連打するものだ。録音は鐘楼から離れた場所からなされており、花火や犬の鳴き声、聴衆の話声など周囲の環境音が存分に聞こえる。頭上に吹いている風によるのか、音波は微妙に揺らいでいるようで倍音やうなりが一種独特な響きを醸し出している。この鐘は音と共にその街の人々の生活と歴史を一斉に叩き出しているかのようだ。
Hyades Arts(Spain) hyCD-6 (c)1992 Llorenc Barber■