Hanne Darboven “Vier jahreszeiten- Opus 7”

omay_yad2005-09-27

■ハンネ・ダーボーヴェンは時間の描写という作業を続けている。例えば歴史的な資料書籍のページごとに、便箋のような紙に筆記体や斜線のドローイング、日時の数字を用いた単純な計算などを付加する。これは過去の出来事にまつわる時間の集積を自らの手で血肉化する作業である。それら何千枚におよぶドローイングを額装したり書物の形にして圧倒的な物量を示す。彼女は音楽というフォーマットも利用する。それらはひとつの旋律の音符を少しずつ変えていくようなミニマルなものだ。10枚組みLPや3枚組みCDというかたちとなってリリースされている。この1枚もののLPは1年間(4つの季節)の月の上り下りの位相的変化を旋律に当て嵌めたものである。ドローイングと同様に彼女自身のエレクトーン演奏による無機的な旋律の連続を聴くことができる。その印象は、所謂ミニマル・ミュージックのような叙情性はなく単純作業に近いものだ。拍子や調性などの音楽的要素は意図されず、あくまでも月が上る位置に連動した変化を示していく。時間の連続に、自らの手を通すことが彼女の作品において重要だ。これが出来事の描写だとしたら、主観を廃したきわめて客観的なものである。ここでは観察や心理的な印象は完全に排除される。つまりこの作品は徹底されたリアリズムのひとつなのだ。
Druck:Sots&Co.Hamburg 1981/1982■