Felix Hess “Frogs 4”

omay_yad2005-10-11

■フェリック・ヘスは自然に向き合いテクノロジーとの関わりを探る作品を作っている。
有名なものは蛙のシミュレーション・マシンである。マイクとスピーカーが積んであり蛙の声を模した電子音を発生させる。そこにセンサーが組み込まれていて周囲が騒がしいと鳴かないように設定されている。足元には輪が付いており赤外線センサーによって明るい場所に集まったりする可愛い機械である。彼はその他、和紙で作った3センチ四方の小さい旗を整然と床に並べ、そこを通過する僅かな風で微動させ風の動きを見せる作品や、光の強さで音を出す発振器をいくつも設置し、その場所の光の量を意識させる作品などがある。彼は「聴く」という行為を重要視している。これはケージやオリベロスのそれとは異なり、自然の事象に対する謙虚な受容の態度である。「見る」のではなく「聴く」…受容すること。能動的なニュアンスではない。したがって巧みな技術を使用しながらもそれを強調せず、制作には一貫して受容の態度が見て取れる。いずれの作品もどちらかと言えば弱々しい儚い印象を受ける。時に蛙を自身のトレードマークのように使うこともあるヘスはその鳴き声に興味を持っている。たくさんの録音作品を発表している。このレコードはA面が3種類の蛙のデュエット、B面は蛙のコーラスのフィールド録音である。どの種類も私たちの国にはいないタイプである。デュエットではお互いがほぼ同周期で鳴いているが、微妙にずれていくタイミングが興味深い。コーラスの方はディレイのようなモアレ効果が面白い。蛙の「鳴く」という行動は、呼吸や心拍と同調したひとつの周期的な運動のようなものだろう。一定の条件を与えればほぼ同じ行動を取るはずだ。湿度や温度差によってその鳴き声の速度が変わるという。一斉に鳴いている様子はその生息環境をそのまま反映している。生きているフィールド・センサーのようなものかもしれない。ヘスはその自然の脈拍のようなものを提示している。しかし実のところ蛙への愛着がこのLPをリリースさせた理由のような気がする。
6818.556 (c) Felix Hess 1985■