Alejandra and Aeron “Folklore Volume One La Rioja”

omay_yad2005-10-14

■これは生きているフォークロアを収めたCDである。レーベル、ラッキー・キッチンのアレハンドラとアーロンはバスク地方に近いスペインの片田舎ラ・リオハを生活の拠点としていた。このCDは数年間にそこで出会った「生きている民俗音楽」をまとめたものだ。それらは現地の老人の料理中の鼻歌や口笛、子供の歌、窓の外から聞こえるお祭りの音楽やある人物の幼少時に気に入っていた曲をラジオから録音したもの、クリスマスの鐘の音など雑多にコンパイルされている。その中に混じって伝統芸能の実況やファドなどもあるがどれもカジュアルな情景として記録されており、それらはちょうど旅人がふと出会ってしまう幸せ、あるいは見知らぬ場所の録音日記のような印象を受ける。彼らなりの等身大の視線で様々な出来事に新鮮に驚き、思わず定着した鮮やかな瞬間が伝わってくる。これは彼らが作る音楽、グラフィック、インスタレーションなどすべての作品に共通する要素でもある。民俗音楽は文化人類学的視点や歴史的視点からだけでなく、その場所の日常性に見出せるものである。このCDは民俗音楽の録音作品から「伝統的な」というニュアンスを保留し、「日常的な」視点を向けた作品だと言える。しかし、よく考えると「日常的な」という言葉の意味するところと「伝統的な」という言葉のそれとは、あまり差が無いことに気づく。いずれも生活空間に流れ広がる場所と時間が含まれている。この2つの言葉の意味するところの違いは時間のスパンが大きいか小さいか、ということだけであろう。
Lucky Kitchen  LK009 (c) A.Bergman and A.Salinas 2001■