Melody “Come Fly With Me”

omay_yad2005-10-16

■このMelodyというフランスのプログレッシヴ・ロック・バンドはこれを含めて2つアルバムをリリースしている。このレコードはPoleというフランスの弱小レーベルからリリースされた。このレーベルは数年間で消滅したようで20枚以下のリリースが確認されるのみである。その内容はシンセサイザーを多用したタンジェリン・ドリームの亜流のようなトリップ音楽かフリー・ロックのような実験的なものが多い。その中でこのバンドはYes や初期Camelのようなシンフォニック系のプログレで75年にしては古いタイプだが比較的洗練された演奏である。このバンドは3人のフランス人以外、カンボジア、ベルギー、アメリカ国籍のメンバーがおりその編成から同国のタイ・フォンを連想させるが、楽曲やテクニック録音技術では大分開きがある。A面は3曲が組曲風に繋がっている。女性ボーカルを適度に配したドラマチックな演奏で、後半はヴァン・ダー・グラフを髣髴とさせる多少激しい部分もある。
だが、問題はB面である。1曲目も同傾向だが女性ボーカルの音程が怪しい。曲にならないまま終わり、その後まるでフリーフォームなダラダラと緊張感を欠いた演奏が4曲続く。アグレッシヴさの欠落したハーフ・ジャパニーズか渡辺カントの○△□のようなアヴァンギャルド・ロックで悪く言えばアマチュア・バンドの練習風景のようである。誰に向けて演奏している訳でもないような、あまりにもバラバラなアンサンブルである。録音状態も良くない。
これを聴くと、81年ごろNHK・FMの番組「世界の民族音楽」で小泉文夫が紹介したタイの北方系少数民族のラフ族の「自由なポリフォニーの演奏」が思い起こさせる。それはまるでキャプテン・ビーフハートのようなな、どの楽器も互いの音にあわせていない異様な民族音楽だった。他の民族と同じ民族楽器を使っているが全く異なるロジックを持っている民族と想像される。メインとなる旋律やリズムもなく出鱈目な音楽は私たちの常識的な音楽的調和はなく、各自が気ままに一斉に音を出しているような演奏だった。
話をこのレコードに戻すと、このLPはレーベルの立役者Philippe Besombesの指揮の下に制作されている。彼自身の提案によって行われた実験であろうか。プログレッシヴの愛好家の間ではミス・プリント説も流れたが、よく聞くと多重録音が施されており、誤って収録されたものではないことが伺える。しかし何度となく聴いていると開放感があるのはむしろこのB面の方であることに気づく。無為な音はこちらの思い入れを受け付けない。構築性の背後にある聴く側への強制的な姿勢は存在しない。恐らくA面の音楽に対して、反対の意図で行われたと考えるのが妥当であろう。レコードを裏返すとネガの世界になっている、ということか。(裏ジャケットは表と同画像の白黒反転イラストである)あるいは全く異なるロジックによって両者に整合性が見出されるのだろうか。
Words and Music composed by MELODY Recorded and Mixed at Studio du Chesnay
Nov. 12-13,1975,under the direction of Philippe Besombes Produced by Pole Records Distribution exclusive Tapioca B TP 10013■