Steve Roden “Schindler house.”

omay_yad2005-10-30

"Schindler house (The sound of architecture/the architecture of sound)"
■このCDはスティーヴ・ローデンがアメリカ西海岸を代表するモダン建築のシンドラー邸にコミットした作品である。そもそも彼が幼少の頃父と共に丘の上に立つ東洋風のシンドラー邸見学に行き、その後、父がシンドラーの手による住居に住んでいたことがこの作品を作るきっかけとなったようである。シンドラー邸は1922年に建てられ60年代以降は様々なアヴァンギャルドの動向にパフォーマンスやレクチャーのために開放されていた。ケネス・アンガーがフィルム上映をしたこともあり、短い間だがジョン・ケージもそこに住んでいたという。ローデンが行ったのは音源を作りその建築の三箇所に設置したインスタレーションである。このCDには、その場所で採取した音を素材として音源が収録されている。庭の竹林にいくつか小型スピーカーを置いて鳴らしたもの、窓際にCDプレイヤーを置きヘッドフォンで外部の音が聞き取れる程度の静かな音量で再生するもの、この建築で最もユニークな路地にスピーカーを仕込んだものの三つである。音源を聴く分には興味深いサウンド・デザインだが、その素材を収録した場所にスピーカー類を設置し音だけ流したインスタレーション自体はその建築に大きく関わる内容を持ったものとは考えにくい。それは音量や作品の物理的スケールの問題ではなく、音響加工と建築の構造的関連、あるいは概念的関わりに弱さが伺えるからだと思われる。しかし「Pathway」の最後に収録された深夜のシンドラー邸での「4’33”」は この建築の存在に関わっていると言えるだろう。遠い過去の余韻が建築に、うっすら残っているとイメージして行われたのではないだろうか。闇に包まれた深夜には人々の活動が停止し、時や場所の把握が困難になる。もし微かな余韻を聴くとしたら深夜しかないだろう。ある場所で起きた出来事は、その場所に何らか影響を与えている筈だ。物理的に証拠を提示できなくとも、そこに「在った」ことは事実である。これはシンドラー邸がアヴァンギャルドに開放されていた時代へのオマージュとして受け止められる。
また彼のこの作品は別の作品とも関連が指摘できる。97年にIn be tween noise名義でリリースした『Splint』という7インチCDでは1943年に海軍の要請を受けてチャールズ・イームズが考案しEvans社が製作した骨折時の副え木、レッグスプリントを擦ったり叩いたりした音を使用した音楽をリリースしている。西海岸出身の彼はその地とそこで活動したアーテイストを愛好しており、これらの作品は、郷土愛のような個人的な思いが秘められていると想像できる。この作品は彼の父に捧げられている。現在彼はLAの郊外パサデナでUFOのような形の不思議な建築に住んでいる。
MAK Center Npibmak-001 2001■