Filament “Filament BOX”

omay_yad2005-11-09

フィラメントはSachikoMと大友良英の2人のユニットである。
ここには2000年11月から2004年1月の間ブリュッセルバルセロナヘルシンキ、京都でのライヴと東京での録音が収められている。
サイン波、とくに高周波のそれとグリッジを多用したこの音楽は、演奏における音の重層性や響きの豊かさのような、どちらかと言えば空間的、あるいは量的なものと称される部分を剥ぎ取った音楽である。
また所謂インプロ演奏の掛け合いにおいて「白熱する」と称されるような温度感覚や身体性も確実に剥ぎ取られている。
そのようなものを求めるリスナーにとっては一聴すると馴染みにくいかも知れない。しかしじっくり音を聞いてみてほしい。どの演奏にも古典的な意味における音楽的なテンションは最初から最後までがっしりと持続している。
これらの演奏は何だろうか。
先に述べた演奏における空間的、身体的なものが3次元だとするならば、この音楽はそこから1つ2つ、次元を減らした世界に響く音楽である。
音の厚みは面積の比率に響きは線分の長さに変換されている。
それらは活動し続けてきた2人によって培われたプレイヤーとしての直感に支えられている。
その結果私たちに聴こえるものは、極細ですぐにでも切れてしまいそうなピアノ線で綱引きをするような繊細で緊張感に満ちた演奏である。
FMC-030〜034 (5CD set)
F.M.N. sound factory