Christian Wolff "Stones"

omay_yad2005-11-13

クリスチャン・ヴォルフの石を奏でる作品「Stones」はウィーンのEdition Wandelweiser Recordsからリリースされた。
まさにこのレーベルに相応しい作品である。
その大いに注目されるべきでレーベル、Edition WandelweiserはTimescraper Music Publishingの傘下にある楽譜や録音作品などの出版を手がけているレーベルで、沈黙、静寂をテーマに据えた非常に質の高い作品を出版している。CD作品は一切駄作は無くすべてが徹底されている。 どれも長大な静寂空間が立ち表れ、リスナーの真摯な集中力を引き出してくれる。
例えばJohn Cageの「カートリッジ・ミュージック」は、大概が騒々しい雑音の祭典のようなもの認識され粗雑な演奏になる場合がほとんどだが、ここのレーベルから出されると実に静寂で美しい作品となる。このあたりにレーベル主宰のAntonie Beugerの姿勢が読み取れる。

ヴォルフのこの作品は以下の指示のもとに行われる。

石から音作り出すこと、石から音を引き出すこと。
いくつもの大きさや種類や色のものを使う。
断続的に、時に速い周期で演奏すること。
ほとんどは石と石を叩く音で構成される、あるいは石を石で擦る、弓で擦る、場合によってはアンプで増幅しても良い。
石をいかようにも破壊してはならない。

空間に響く石の音。叩く音が空間に広がる。石の響きは演奏空間を作り出す。ある場所(演奏空間)があって、石を奏でる演奏家がいるのではなく、石の響きによって演奏空間が表れることになるのだ。演奏会において演奏者がいてその音楽が成り立つのではない。石という素材が楽器になる瞬間の音を私たちは目撃するのである。
このように意識が働かなければ「非楽器を使った偶然性の(あるいは即興の)音楽」と認識され消費され、音楽との幸せな関係は結べない。

CDで聞く場合、その空間での響きのほか、鈍い、硬い、乾いた響きから埃っぽいザラッとした石の手触りまで私たちの意識に表れては消える体験となる。

Wandelweiser Komponisten Ensemble

EWR9604
(c) (p) 1996 Timescraper Music Publishing GMBH