The conet project

omay_yad2005-11-19

Recordings of shortwave number stations
乱数放送をご存知だろうか。短波の周波数帯で無意味なシグナルの後、淡々と数列を読む声が放送されるものである。短波ラジオで初めてそれを聞いたとき戸惑ったが、アマチュア無線に精通している者によれば、この放送がどこの国から発信されているか不明だが諜報機関が利用していて受信者は乱数表を手にしながらメッセージを解読するのだ、と信じがたい事実を話してくれた。そう言われればスパイが捕らえられた時、自害用アンプルと短波ラジオを携帯していたというニュースを過去に聞いた覚えがある。非日常的でまるでサスペンス映画そのもののようである。しかし、実際に公的機関から出版されていた周波数表(現在廃刊)にも周波数帯の何箇所かに「乱数放送」と明記されていた。公に存在を認められた謎の通信なのである。
このブックレット付きの4枚組みCDは主に欧州圏内の乱数放送の類を5時間近くこれでもかと詰め込んだCDである。その中には未だに有効に使われているものや、自動的に再生されているだけのものなど、私たちの頭上、上空遥か彼方に飛び交いざわめくノイズのアーカイヴである。これを聞き進めていくとその電波を更に俯瞰して聞いているような奇妙な気分に陥る。一見図鑑のような編修意図だが恐らくこのような聞き方になることを狙っているようである。
日本国内ではアジア系の乱数放送を聞くことができる。冷戦時代に大いに使用され、近年では衛星通信やモバイルが発達し徐々に衰退している乱数暗号放送だが、未だに現役で使用されてもいるようだ。たとえば、民間レベルでは沿岸で水揚げされた魚介類をどこの港が一番高く買い取るかを暗号放送を頼りに、寄港地を選ぶ漁船もあるそうだ。

まるで極楽浄土のように澄んだ青空の彼方の電離層にまで私たちの社会が発信した欲望の残骸が渦巻いているかと思うと少々複雑な気分になる。

Quadruple CD
Irdial-Disc 59ird tcp1
Made in England