ЮРИЙ МОРОЗОВ “РЕТРОСКОП” +

omay_yad2005-11-28

これはロシアのソングライター、ユーリ・モロゾフが70年代初頭に自宅でテープ録音したアルバムを収録したCD-Rである。公的に販売されたものではない。
約31分間の"РЕТРОСКОП(Retroscope)"と"ЗЕМЛЯ ШОМОВ(Land of Dwarfs)"の断片である。
この2つのアルバムは当時は闇でごく少数流通していたものなので情報は全く存在しない。
両者ともアルバムの内容はほとんど弾き語りに近いフォーク・ソングだが、"РЕТРОСКОП(Retroscope)"の母国語のメロディーには翳りがあり、歌詞は不明だが歌い方から哲学的な印象を受ける。反体制のメッセージを歌ったものという様子ではないようだ。公には存在しなかった内相的なアシッド・フォーク作品である。
一方"ЗЕМЛЯ ШОМОВ(Land of Dwarfs)"はビートルズのロシア語カバーでギター2本の簡素な演奏で「Fool on the hill」などを演奏している。テープの頭から8分までしか残っていないようで全貌は掴めない。意味深なアルバムタイトルであり気になるところだが調べようがない。このような闇録音が出回っていたのだから、彼はある程度知名度があったのだろう。

これらのアルバムの前に69年から71年の間にБОСАКИ(Boshaky)という数名のバンドと共に録音されたものがある。
こちらもドラムレスでエレキ・ギターとたまにピアノの伴奏も入るがよりラフでビート風である。
それと74年以降の音を集めた"Cherry garden of Jimi Hendrix"から判断すると恐らくこの2つのアルバムは71年から74年の間のものであろう。これらは当時、もしかしたらオープンリールだったのかもしれない。CD-Rにダビングされた原版はカセット・テープだったようだ。原版といっても、一つ一つダビングした自家製であり、孫あるいは曾孫マスターからのダビングであろう。ちょうどライヴハウスの物販のようなかたちで当局に内緒で売られていたものだったのではないだろうか。

ペレストロイカ以降もロシアには自主レーベルから質の高いフォークロックが排出されている。アクアリウムのメンバーやАДО(Ado)あたりがそれにあたる。
メッセージ性のある音楽が存在する背景には複雑な国の事情があるだろう。ソビエトの辺境地では連邦国時代の方が物品や金銭の流通が良かったらしく、まともな医療機関すら無いところがあるそうだ。そこに来てのグローバリズムである。チェチェン問題にしろ、草の根レベルで現体制への批判が相次いでいる。あまりにも広すぎる領土の調整にはまだまだ永い時間が必要なようだ。

(データ無し)