Phill Niblock “The movement of people working”(DVD)

omay_yad2005-11-29

このDVDの映像と音にコンセプチャルな関連を見出すのは難しい。
映像は作者のニブロック自身が70年代に南米やアジア、東欧諸国にて農家や波止場での肉体労働者の作業を延々と撮影したものである。織物、農作業、荷物運搬…どことなくNHK新日本紀行」を思い起こさせる映像はまるでドキュメント・フィルムである。ショットにも統一感がなく場合によってはズームし視点もこまめに切り替わり美学的なフレームワークはない。実験フィルムにありがちな長回しをしているわけでもない。画面と音は一切シンクロしていない。延々と深いドローン音楽が映像にずっしりとのしかかる。この音楽ならどのような映像でもマッチするのではないかと思わせる圧倒的な力がある。
ライヴで彼は複数のこのような映像を壁面一杯に投影し、割れんばかりの大音響を流す。オランダの廃墟で行われたコンサートでは朽ちた壁がバリバリと剥がれ落ちてきたという…
DVDを観るより映像の意味性が増し何時間も続けられるとフィルム・デザインとしてもアンバランスとなり戸惑いが起こる。淡々と繰り返される時間を体感させられるが、それだけではないだろう。恐らく作者の中で何らかの必然性があるはずだ。映像のBGMだったら爆音で流す必要もあるまい。ニブロックは2つの間に通常の思考によっては辿り着けない関係をみているのかもしれない。

大波の海原で長時間泳ぎ、就眠時になっても体に波の余韻が残るように、この音と映像の体験はそれが通り過ぎた後に身体に残る。
この余韻は私たちは思考の盲点を刺激している。

Multi-zone color NTSC 5.1
3Hr28min
4:3
Extreme,Australia
XDVD 001