James Lee Byars  “Perfect is my death word”

omay_yad2005-12-03

バイヤースは怪しげな芸術家である。黒尽くめの服にシルクハット、覆面までして表れ謎めいた作品やパフォーマンスを作ってきた。その活動暦は長く世界的に有名である。
意味深な言葉と金色と黒を多用した作品はどことなく神秘主義的あるいは錬金術的なイメージを漂わし演劇的な印象を受ける。
コンセプチャル・アーティストと認識されているようだが、作品をよく見ていくと、どちらかと言えばシアトリカルな作家と言えよう。文字を印刷した作品やオブジェと彫刻、ドローイング作品の方がパフォーマンスより量は多いが、パフォーマーの作品と捉えた方がしっくりくる。

この作品集は1995年にドイツで行われた展覧会のカタログである。金蒸着CDの作品が付いており、それ以外にも彼の過去の印刷マルチプル作品(一部レプリカ)が多数封入されているので人気があり国内数箇所の専門店に入荷した。この作品集は小さな回顧展のようなものになっている。
最新作であったCDの内容は、20分の無音の後に“Perfect is my death word”と本人の声が一秒間収録されている。その後1分の無音となって終わる。
このCDは作品集のメインではあるが、同封された他の11種類の作品も過去のものとほぼ同等の「本物」であり美術コレクターには興味深いものである。
下記の作品群の11番目の作品は、この作品集のリスト表記から漏れていたものである。CDを含め11種類となっているが実際はもう1種類あった。その作品は”The exhibition of perfect”である。この回顧展を自宅で楽しむ時のタイトルとなるであろう。
十文字に開く白いカートン函の中に3枚の封筒があり、その中に下の作品が収められている。CDは同じ白い厚紙に閉じられて封入されている。

1:WWS HAS BEEN RENAMED THE INSTITUTE FOR THE ADVANCED STUDY OF JAMES LEE BYARS (1969)
長さ11.3cmの星型の白い紙にルーペで見ないと読めない小さい字で上記の文字が印刷されている。WWSとは何のことだろうか。
2:PUT THE PERFECT TEAR IN THE MIDDLE (1976?)
2.5cmの正方形の黒い(艶なし)紙の中心に上記のルーペで見ないと読めない文字が金色で印刷されている
3:THE PERFECT LOVE LETTER(1976)
11.5×15.3cmの薄い紙の中心に上記の文字がエンボスでプレスされている
4:THE PERFECT PERFORMANCE IS TO STAND STILL(1976)
9.3cmの正方形の黒い(艶なし)紙の中心に上記の文字が金色で印刷されている
5:THE BLACK PAPER ON ART(1983)
19cmの円形の薄い黒い紙の中心に上記の文字がエンボス・プレスされている
6:BEAUTY GOES AVANGARDE(1986)
52.2×38cmの薄い白紙の中心に手書きの星型模様が集中した線描が印刷されている。10.5×19.3cmに折りたたまれている
7:JAMES LEE BYARS(1986)
39×27.8cmの無地の金紙(裏は白紙)が4つに折られている
8:THE PERFECT THOUGHT(1990)
太さ0.3mmの2mの3本撚りの金糸
9:TRIBUTE TO THE NEW GENERATION(1991)
1.8cm直径の金色(両面)外延から中心に伸びる螺旋の細い線がエンボス・プレスされている。同じものが3枚で1組
10:THE PERFECT SMILE
7.7×4.2cmの黒い(艶なし)紙の中心に上記の文字が金色で印刷されている。単語の間の空白はな15文字が繋がっている
11:THE EXHIBITION OF PERFECT(1980)
2.5cmの正方形の白紙の中心に上記のルーペで見ないと読めない文字が印刷されている。
12:PERFECT IS MY DEATH WORD
20分の無音の後に上記の声が一秒間録音されている。その後1分の無音。ゴールドCD

こうして作品群を一覧してみるだけでこのアーティストのエキセントリックな様子が理解できるだろう。

このCDを面白くしているのは金蒸着である、ということだろう。黄金の中から声が発せられるのである。バイヤースはこの展覧会の2年後の1997年に永眠した。
芸術家は作品の中で生きている。この黄金の円盤の中で彼は完璧な声となって存在しているのだ。

Bücher-Editionen-Ephemera
Neus Museum Weserburg Bremen 1995