2005-01-01から1年間の記事一覧

m/s + toshiya tsunoda “ful”

■このCDの録音状況は以下の通りである。ある密閉性の高い室内の窓の上部に通気用の小窓が付いている。小窓のガラスは時折パタリと音をたてる。これは恐らく室内外の気圧変化によるものらしい。窓ガラスにコンタクトマイクを設置し、これをアンプで増幅しス…

杉本拓 “Principia Sugimatica”

■このCDは杉本拓にとって新境地であろう。この作品での音と余白の関係は明解である。例えば1分間を3つに割ったポイント、20秒おきにギターの短い単音が入る。続いて1分間を4つに割ったポイントにギターの短い単音…という風にある秩序に従って時間を区切り音…

Melchior “Uppysingar”

■このMelchiorというバンドは版画家ディーター・ロスがほとんど勢いで立ち上げたかのようなレーベル、Dieter Roth Verlagから『Balapopp』というLPとこの7インチ・シングルをリリースした。彼等はアイスランド出身の知的で少々屈折した感性が発揮されたト…

And ”The sparkling white wine...”

"The sparkling white wine sailor cat AND cormorant friend Louise" ■これはフィル・エドワーズの「ヴィジュアル作家によるリハーサルなしの即興演奏」プロジェクトAndのCD-Rである。Phil EdwardsのキーボードとPeter Ellisのテレキャスター、Louise Weav…

Murmurmania

■このCDの作者Phil Edwardsはメルボルン在住の画家であり、アマチュア音楽家である。これは彼の初めてのピアノ演奏を録音スタジオで1時間収録したものである。何の準備もなくいきなり弾いた演奏は音楽になっていない。ただの出鱈目である。しかし彼はこれ…

Steve Roden “Schindler house.”

"Schindler house (The sound of architecture/the architecture of sound)" ■このCDはスティーヴ・ローデンがアメリカ西海岸を代表するモダン建築のシンドラー邸にコミットした作品である。そもそも彼が幼少の頃父と共に丘の上に立つ東洋風のシンドラー邸…

Charlemagne Palestine “Music for big ears”

■シャルルマーニュ・パレスティンの代表作は仏シャンダールからリリースされた”Strumming Music”である。ベーゼンドルファーの残響ペダルを踏みっぱなしにして延々と鍵盤を弾き忘我的な響きを紡ぎ出すその演奏はミニマル・ミュージックの持つ快楽的な音響面…

ЧОЛБОН “ПРОКЛЯТЫЙ КАМЕНЬ”

Cholbon “The Damned Stone” ■チョルボンはシベリアの地から登場したヤクート族末裔のロック・バンドである。様々なジャンルでミュージシャンが自らの出身をアイデンティティとすることがあるが、私たちにとってヤクート族のイメージが持てない故に殊更ミス…

Ted Purves “mid-november even of ...”

"mid-november event of miles avenue involving a migration of birds and a lapse or interruption" ■テッド・パーヴェスは西海岸在住、アーティスト活動をしながらキューレーション活動も行っている。エコロジカルな視点によるマルチプル・アート出版やイ…

Annette Krebs “guitar solo”

■アンネット・クレブスは女性のギタリストである。このCDはギターソロと題されエレクトリック・ギターを使用しているはずだが、その楽器らしい音はほとんど聴くことができない。微かな物音が余白の空間に散らばっている。集中して聴くと音の印象が変化する…

Oren Ambarch&Johan Bethling “My days are darker than your night

■ハプナは多種多様な新しい音楽の動向をリリースするスウェーデンのレーベルである。音楽ユニットTapeのリーダーでもありレーベル・オーナーの一人、ヨハン・バースリングとオーストラリア出身でイギリスのTouch等からたくさんの作品をリリースしている電子…

Animist Quartets

■アニミスト・カルテット−精霊主義楽団はジェフ・ジャーマンの手による作品である。彼はHands Toという名の具体音やフィールド録音をイフェクトするノイズ音楽ユニットで古くから活動している。この作品はAlluvial RecordingからCD-Rでリリースされた。レー…

Itineraire

"Transforming an object.Tranceforming a piece of sound" ■「遍歴録」とでも訳すのだろうか、これはドイツのインディペンデント・レーベル、ゼレクチオーンからリリースされた共同制作CDである。プロジェクトに関する情報は一切載っていないが察するに、…

ФИРЮЗА Firyuza

■フィリューザはトルクメニスタンのジャズロック・バンドである。近年CD化された旧ソ連時代の同自治区出身にグネシュというバンドがあるが、彼等がZaoに中央アジア民謡を混ぜたようなテクニカルでアグレッシヴなもの だとすると、フィリューザはソフト・マ…

John Cage nova musicha n.1

■欧州大陸の音楽には欧州の伝統が根ざしている。シュトックハウゼンやメシアンに代表されるような、中心性を持った楽曲にはその伝統が反映されている。よく言われるところだが、例えばキュビズムには透視図法的な遠近法は無くなったが、そのタブローには構成…

Henri Chopin “les neuf saintes-phonies”

■仏のアンリ・ショパンは声によるテープ音楽のアーティストである。そして図形譜のようなテキストをしばしば制作する。独のカールフリードリッヒ・クラウス同様に声のフェティシズムとも言うべき録音作品を制作するが、クラウスと異なるのはその構築性を重視…

Carlfriedrich Claus “Lautaggregat”

■独のカールフリードリッヒ・クラウスは声とドローイング、版画のアーティストである。仏のアンリ・ショパンと同様に声のフェティシズムとも言うべき録音作品を制作するが、ショパンと異なるのは、生々しく粗野な即興演奏のような部分だ。彼のドローイングは…

Quadradisc Atom Heart Mother

■これは3枚組みのプライヴェートCDである。ピンク・フロイドの「原子心母」の4チャンネル・ミックスのマスター・コピーから落とされたもので、Disc1はオリジナル4ch Mix、Front MixとRear Mixは別々にDisc2 Disc3に収められている。Disc2とDisc3を2つの…

寺内タケシとブルージーンズ ”禅定”

■寺内タケシの小学校時代のエピソードは有名である。徴兵中の兄のアコースティック・ギターに電話から取り出したコイルを取り付け、親の目を盗み真夜中に自宅に設置されていた町内連絡放送機器につないで世界初の電気ギターを爆音でかき鳴らした。近所の人は…

Melody “Come Fly With Me”

■このMelodyというフランスのプログレッシヴ・ロック・バンドはこれを含めて2つアルバムをリリースしている。このレコードはPoleというフランスの弱小レーベルからリリースされた。このレーベルは数年間で消滅したようで20枚以下のリリースが確認されるのみ…

Atsushi tominaga “056”

■WrKで活動していた富永敦の7インチシングル盤は、家庭用電子レンジに小型スピーカをセットし数分間作動させた記録である。彼の音響作品は電磁誘導による磁力線上の出来事を記録したもので一貫されている。スピーカー2本を電線で繋ぎ、一方のコーン紙を手…

Alejandra and Aeron “Folklore Volume One La Rioja”

■これは生きているフォークロアを収めたCDである。レーベル、ラッキー・キッチンのアレハンドラとアーロンはバスク地方に近いスペインの片田舎ラ・リオハを生活の拠点としていた。このCDは数年間にそこで出会った「生きている民俗音楽」をまとめたものだ。そ…

The Entire Musical Works of Marcel Duchamp

■これはマルセル・デュシャンが残した楽譜を演奏したものである。70年代にアナログで出ていたものの再発CDである。ケージがデュシャンと交流していたことは比較的知られているが、彼がチャンス・オペレーションという手法によって偶然性の音楽を編み出す遥…

心臓の聴診

■この10インチレコードは医学書に添付されていたものである。医師のための心音聴取の練習等の目的で製作されたもので、現在でも同様のものはカセットやCDの形で存在している。医学的な解説をはさみながら、正常なものから危機感を感じさせられるような異常…

Felix Hess “Frogs 4”

■フェリック・ヘスは自然に向き合いテクノロジーとの関わりを探る作品を作っている。 有名なものは蛙のシミュレーション・マシンである。マイクとスピーカーが積んであり蛙の声を模した電子音を発生させる。そこにセンサーが組み込まれていて周囲が騒がしい…

宇波拓 “狐独”

■本人の弁によるとこの作品は賛否両論にくっきり分かれるという。宇波拓は国内外の様々な演奏家と共演しながらヒバリ・ミュージックという自身のレーベルを運営している。これは彼の初作曲集である。その演奏家たちは以下の11名。 秋山徹次(アコースティック…

杉本拓 “Live in Australia”

■杉本拓は妥協の無い意義深い仕事を続けている。この2枚組みライヴCDは2003年9月にオーストラリアで収録されたものである。Disc1は自身のギターによる「Dot(73)」である。これは長い沈黙の間に点のような音を置いていく楽曲である。極度に音楽的な要素を削る…

虫〜夕暮れのポエジー

■このCDは日本動物行動学会会員であり日本オーディオ協会理事の松浦一郎によって監修・録音されている。非常にクリアーに24種類の虫の鳴き声が図鑑化された大変優秀な録音である。周囲の環境音がほとんど聞こえず、どの録音も虫は単体で鳴いている。国内の…

Kyuss “…And The Circus Leaves Town”

■カイアスのサウンドは、ストーナー系と呼ばれる、アメリカのサイケデリックなハードロックである。ブラック・サバスを継承した重く引きずるようなリフを多用した70年代サウンドに現代的なドライな重量感がある。彼らは解散してQueens of the Stone Ageとい…

ヴィシネグラツキー ”四分音システムピアノのための作品集”

■1オクターブは12の音に分割されている。1分間が60に分割されているように、恣意的にオクターブを細分化することは可能だ。ピアノの場合、演奏の不便さを考慮しなければ鍵盤をいくらでも増やすことはできる。ロシアの作曲家ヴィシネグラツキー(1893〜1979)…