Animist Quartets

■アニミスト・カルテット−精霊主義楽団はジェフ・ジャーマンの手による作品である。彼はHands Toという名の具体音やフィールド録音をイフェクトするノイズ音楽ユニットで古くから活動している。この作品はAlluvial RecordingからCD-Rでリリースされた。レー…

Itineraire

"Transforming an object.Tranceforming a piece of sound" ■「遍歴録」とでも訳すのだろうか、これはドイツのインディペンデント・レーベル、ゼレクチオーンからリリースされた共同制作CDである。プロジェクトに関する情報は一切載っていないが察するに、…

ФИРЮЗА Firyuza

■フィリューザはトルクメニスタンのジャズロック・バンドである。近年CD化された旧ソ連時代の同自治区出身にグネシュというバンドがあるが、彼等がZaoに中央アジア民謡を混ぜたようなテクニカルでアグレッシヴなもの だとすると、フィリューザはソフト・マ…

John Cage nova musicha n.1

■欧州大陸の音楽には欧州の伝統が根ざしている。シュトックハウゼンやメシアンに代表されるような、中心性を持った楽曲にはその伝統が反映されている。よく言われるところだが、例えばキュビズムには透視図法的な遠近法は無くなったが、そのタブローには構成…

Henri Chopin “les neuf saintes-phonies”

■仏のアンリ・ショパンは声によるテープ音楽のアーティストである。そして図形譜のようなテキストをしばしば制作する。独のカールフリードリッヒ・クラウス同様に声のフェティシズムとも言うべき録音作品を制作するが、クラウスと異なるのはその構築性を重視…

Carlfriedrich Claus “Lautaggregat”

■独のカールフリードリッヒ・クラウスは声とドローイング、版画のアーティストである。仏のアンリ・ショパンと同様に声のフェティシズムとも言うべき録音作品を制作するが、ショパンと異なるのは、生々しく粗野な即興演奏のような部分だ。彼のドローイングは…

Quadradisc Atom Heart Mother

■これは3枚組みのプライヴェートCDである。ピンク・フロイドの「原子心母」の4チャンネル・ミックスのマスター・コピーから落とされたもので、Disc1はオリジナル4ch Mix、Front MixとRear Mixは別々にDisc2 Disc3に収められている。Disc2とDisc3を2つの…

寺内タケシとブルージーンズ ”禅定”

■寺内タケシの小学校時代のエピソードは有名である。徴兵中の兄のアコースティック・ギターに電話から取り出したコイルを取り付け、親の目を盗み真夜中に自宅に設置されていた町内連絡放送機器につないで世界初の電気ギターを爆音でかき鳴らした。近所の人は…

Melody “Come Fly With Me”

■このMelodyというフランスのプログレッシヴ・ロック・バンドはこれを含めて2つアルバムをリリースしている。このレコードはPoleというフランスの弱小レーベルからリリースされた。このレーベルは数年間で消滅したようで20枚以下のリリースが確認されるのみ…

Atsushi tominaga “056”

■WrKで活動していた富永敦の7インチシングル盤は、家庭用電子レンジに小型スピーカをセットし数分間作動させた記録である。彼の音響作品は電磁誘導による磁力線上の出来事を記録したもので一貫されている。スピーカー2本を電線で繋ぎ、一方のコーン紙を手…

Alejandra and Aeron “Folklore Volume One La Rioja”

■これは生きているフォークロアを収めたCDである。レーベル、ラッキー・キッチンのアレハンドラとアーロンはバスク地方に近いスペインの片田舎ラ・リオハを生活の拠点としていた。このCDは数年間にそこで出会った「生きている民俗音楽」をまとめたものだ。そ…

The Entire Musical Works of Marcel Duchamp

■これはマルセル・デュシャンが残した楽譜を演奏したものである。70年代にアナログで出ていたものの再発CDである。ケージがデュシャンと交流していたことは比較的知られているが、彼がチャンス・オペレーションという手法によって偶然性の音楽を編み出す遥…

心臓の聴診

■この10インチレコードは医学書に添付されていたものである。医師のための心音聴取の練習等の目的で製作されたもので、現在でも同様のものはカセットやCDの形で存在している。医学的な解説をはさみながら、正常なものから危機感を感じさせられるような異常…

Felix Hess “Frogs 4”

■フェリック・ヘスは自然に向き合いテクノロジーとの関わりを探る作品を作っている。 有名なものは蛙のシミュレーション・マシンである。マイクとスピーカーが積んであり蛙の声を模した電子音を発生させる。そこにセンサーが組み込まれていて周囲が騒がしい…

宇波拓 “狐独”

■本人の弁によるとこの作品は賛否両論にくっきり分かれるという。宇波拓は国内外の様々な演奏家と共演しながらヒバリ・ミュージックという自身のレーベルを運営している。これは彼の初作曲集である。その演奏家たちは以下の11名。 秋山徹次(アコースティック…

杉本拓 “Live in Australia”

■杉本拓は妥協の無い意義深い仕事を続けている。この2枚組みライヴCDは2003年9月にオーストラリアで収録されたものである。Disc1は自身のギターによる「Dot(73)」である。これは長い沈黙の間に点のような音を置いていく楽曲である。極度に音楽的な要素を削る…

虫〜夕暮れのポエジー

■このCDは日本動物行動学会会員であり日本オーディオ協会理事の松浦一郎によって監修・録音されている。非常にクリアーに24種類の虫の鳴き声が図鑑化された大変優秀な録音である。周囲の環境音がほとんど聞こえず、どの録音も虫は単体で鳴いている。国内の…

Kyuss “…And The Circus Leaves Town”

■カイアスのサウンドは、ストーナー系と呼ばれる、アメリカのサイケデリックなハードロックである。ブラック・サバスを継承した重く引きずるようなリフを多用した70年代サウンドに現代的なドライな重量感がある。彼らは解散してQueens of the Stone Ageとい…

ヴィシネグラツキー ”四分音システムピアノのための作品集”

■1オクターブは12の音に分割されている。1分間が60に分割されているように、恣意的にオクターブを細分化することは可能だ。ピアノの場合、演奏の不便さを考慮しなければ鍵盤をいくらでも増やすことはできる。ロシアの作曲家ヴィシネグラツキー(1893〜1979)…

Arnold Dreyblatt  “The Orchestra of Excited Strings”

■楽音には必ず倍音成分が存在する。ギターなどで用いられるハーモニクス奏法というものがある。チューニングの際に行われることがあるが、弦の特定の部分に軽く触れて弾くとその基音が少しミュートされ倍音を聴くことができる。アーノルドを中心とする5人の…

TUVA:Voices from the Center of Asia

■少しでも民族音楽を聴いたものなら慣れ親しんだ音楽文化とは全く異なる基盤に直面し、戸惑いが起きるだろう。やってはいけない発声法や間違ったピッチの不協和音が堂々と響いてくるからだ。この中央アジアに位置するトゥーヴァ共和国でのホーメイや歌の器楽…

安東ウメ子・ムックリの世界

■このCDは素晴らしい。安東ウメ子というアイヌ演奏家のムックリ(口琴)とウポポ(座り歌)の録音である。これは北海道幕別町教育委員会が制作したものでレコード業社の出版物ではない。しかし予想に反して録音は良好で音楽とそれを取り巻く環境がストレートに…

Ivan Alexeyev,Khomus

■旧ソ連メロディア社のこのLPはヤクート族の口琴独奏が収録されている。口琴(ジューズハープ)は、竹などの樹木や金属板に切込みを入れて作った弁を弾き、口腔の体積で倍音を調整して演奏する楽器で世界中に分布している。これは歴史の古いもので、北極圏…

Walter De Maria “Drums and Nature”

■ワルター・デ・マリアは現代アート界で世界的に有名なアーティストである。「ランド・アート」の作家に分類されることが多い。荒野に長い金属支柱を立て雷を落とす「The Lightning Field」という代表作はよく知られている。また「Vertical Earth Kilometer…

Roberto Donnini “Tunedless 2”

■メジャー、マイナーを含めてイタリアには多様な実験音楽シーンがある。未来派の時代からルイジ・ノーノまで、もしかしたら前衛=共産主義という図式があったのかもしれない。現在イタリア歌謡界の重鎮のフランコ・バッティアートも70年代にBLABLAなるレーベ…

Peider A. Defilla ”test-signale”

■このミュンヘンの画廊で制作されたレコードは謎につつまれている。どのような経緯で何を意図して作られたかわからないが、興味深い内容である。ジャケットはシルクスクリーンによる印刷である。その内側には24ページにわたるブックレットが付いている。A面…

wrk V229

■このWrKの共同作品は、マイクロフォンからアンプを通してスピーカーで再生する過程、 すなわち音声信号を別の空間に搬送する伝達経路とは如何なるものか、ということをテーマに作られた作品である。 toshiya tsunodaは伝達のための情報の変形を扱っている。…

Hanne Darboven “Vier jahreszeiten- Opus 7”

■ハンネ・ダーボーヴェンは時間の描写という作業を続けている。例えば歴史的な資料書籍のページごとに、便箋のような紙に筆記体や斜線のドローイング、日時の数字を用いた単純な計算などを付加する。これは過去の出来事にまつわる時間の集積を自らの手で血肉…

Leif Elggren ”Cu”

■リーフ・エルグレンの活動は理解しがたい特殊な一面がある。秘密結社の儀式めいたオブセッショナルな行動が多々見受けられる。察するにこれは北欧の歴史、政治、文化に関連しているのだろうか、私たちには理解が及ばない。 このカートン・ボックス入りのシ…

Colette Roper ”Piano Pieces”

■このコレット・ロパーというイギリスの女性音楽家に関しては全く情報がない。リリース元はドイツの画家ディーター・ロスのDiter Roth's Verlag。300枚限定で世に出たものである。反復を多用したつたないタッチの、恐らく自作自演によるピアノは、叙情的なミ…